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風土、季節、人、大川でしかつくれない、本物の味わい。
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エツ漁の盛んな若津港
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昔々、筑後川のほとり、渡し船に乗りたいと頼む旅の僧侶を、若い船頭が助けた。
その僧侶の名は、空海。
お礼にと川に投げた葦の葉は、1匹の魚「エツ」になった―大川にはそんなエツ伝説がある。
5月から7月にのみ、有明海から筑後川へのぼってくるエツ。筑後川には朝から多くの漁船が行き来し、昼には「エツはいらんかね〜」という行商の声が街に響く。
日暮れには屋形船が浮かび、月明かりが水面を照らす。
それが幼い頃から目にしてきた大川の夏だ。
世界でも数少ない貴重なエツのお味はというと…これがまた絶品。プリプリっとした歯ごたえと口の中で広がる上品な味わいが癖になる。この時期、この場所でしか味わえない味と思うと、美味しさもひとしおだ。
四季を感じ、自然を感じ、風土を感じる。
これこそが、本物の味わい方なのだと思う。
今となっては贅沢なことなのかもしれないが、実際にその土地に行き、時の物を頂くことは、本来のあるべき食の在り方だと思う。効率化を図り、大量生産大量消費の時代を経てもなお、古き良き食文化を守り抜いてきた人々が大川にはいる。 |
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その代表的なものとして、大川の酒造りが上げられる。
筑後川の豊富な水、上質な筑後米、冬期の湿度低下など、大川
の恵まれた自然条件に感謝はしても、決して甘えることなく、頑なに昔ながらの酒造りを続けている。
機械化による大量生産が一般的となった今でも、昔ながらの製法にこだわっているのは「手間を惜しまなければ、酒は応えてくれる」という杜氏の強い意志が受け継がれているからだ。
しかし、それだけではない。これまでのお酒の品質を守りながらも、新しい味への挑戦も怠ってはいない。130年の歴史を誇る「清力酒造」では、有明海原産の海苔焼酎が生まれた。
八女茶や嬉野茶で割って飲むとさらに美味しく、九州ならではの渋く落ち着いた味わいが楽しめる。
他にも数々の新酒を造りだし多くの賞を受賞している。 |
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昔からの酒造り |
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あまおう 苺畑
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また、大正11年に創業された老舗「若波酒造」では、福岡
産の苺「あまおう」を使用した苺のお酒、その名も「あまおう」が話題になっている。
女性杜氏の手によって創られたこの銘酒は、八女産の蜂蜜を使った国産最高品質のリキュールとして瞬く間に広がり、今では入手困難なヒット商品になっている。
「これまでの伝統」を守り、「これからの伝統」を創っていく。
大川には、そんなモノづくりへの熱い情熱が脈々と受け継がれている。
四季の移ろい、筑後川の流れ、大地の恵みに感謝しながら、今日も大川の美味が創り出されていく。 |
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